AI活用の品質は、モデルの性能だけでなく、入力するデータの品質と利用目的の明確さに左右されます。個人情報、営業秘密、顧客データ、著作物を分類し、扱いを決めます。
AI活用の品質は、モデルの性能だけでなく、入力するデータの品質と利用目的の明確さに左右されます。個人情報、営業秘密、顧客データ、著作物を分類し、扱いを決めます。
最初に行うのは、AIに入力してよいデータの分類です。個人情報、営業秘密、顧客データ、著作物を分類し、入力可否、保存期間、第三者提供、学習利用の扱いを決めます。既存の情報資産分類がある場合は、それにAI利用の列を1つ追加する形が現実的です。
| データ区分 | 外部SaaSへの入力 | 必要な条件 |
|---|---|---|
| 公開情報 | 可 | 特になし。出典の正確性は別途確認 |
| 社内一般(非機密) | 条件付きで可 | 学習利用オプトアウト、保存期間、リージョンの契約確認 |
| 個人情報 | 原則として要検討 | 利用目的の特定と通知、委託先管理、越境移転の確認 |
| 要配慮個人情報・健康情報 | 原則不可 | 同意取得、別環境での処理、アクセス記録の保全 |
| 営業秘密・未公開情報 | 原則不可 | 秘密管理性を損なわない構成(専用テナント・自社環境) |
| 第三者の著作物 | 条件付きで可 | 利用許諾の範囲、出力への複製・翻案の有無を確認 |
本番運用では、ID管理、テナント分離、暗号化、アクセスログ、プロンプトインジェクション対策、出力の情報漏洩検査が必要です。これらは一度に全部そろえるのではなく、扱うデータの区分に応じて必要な範囲を積み上げます。
外部文書やWebページを読み込む構成では、その内容に埋め込まれた指示がモデルの動作を変えるプロンプトインジェクションが成立します。入力フィルタだけで完全に防ぐことはできないため、被害が発生しない構成にすることが基本方針になります。
OWASPが公開しているLLMアプリケーション向けのリスク一覧は、自社構成の点検表として有用です。全項目を満たす必要はありませんが、どの項目を「該当しない」と判断したのかを記録しておくと、監査時の説明が容易になります。
入力の統制に比べて見落とされがちなのが、出力側の検査です。検索対象に含まれていた機密文書の内容が、権限のない利用者への回答に引用されるケースは、権限設計の漏れとして実際に発生します。
対策としては、回答に引用元の文書IDを必ず付与し、その文書に対する利用者の閲覧権限を回答返却の直前に再検証する構成が有効です。検索時点の権限チェックだけでは、権限変更直後の隙間を防げません。
また、個人情報や機微情報のパターン検出(DLP)を出力に適用し、検出時には出力の抑止と管理者への通知を行います。誤検知が多いと運用が回らないため、検出ルールは自社データで調整し、抑止と警告の2段階に分けるのが現実的です。
データを使えるかどうかだけでなく、誰が、どの目的で、どの期間、どの結果を得たかを追跡できる状態にします。これは監査対応のためだけではなく、インシデント発生時に影響範囲を特定するための必須条件です。
| 記録項目 | 保存の目的 | 確認したい場面 |
|---|---|---|
| 利用者ID・所属・時刻 | 誰の操作かの特定 | 情報流出時の影響範囲の特定 |
| 入力内容(または要約とハッシュ) | 何を渡したかの再現 | 機密情報の入力有無の確認 |
| 参照した文書ID・版数 | 根拠の再現 | 誤情報の原因が旧版参照か否かの判定 |
| モデル・プロンプトの版 | 出力の再現性 | モデル更新前後の品質変化の説明 |
| 出力内容と確認者の判断 | 人間の関与の証明 | 監査での説明責任、責任分界の明確化 |
入力内容そのものを長期保存すると、ログ自体が新たな機密情報の集積になります。保存範囲と保持期間は、追跡の必要性とリスクを比較して決め、ログへのアクセス権限も業務システムと同等に管理してください。